1 なぜ「無期転換ルール」が問題になるのか?

(1)無期労働契約と有期労働契約の違い

 使用者と労働者の間で締結する労働契約には、期間の定めのない契約(無期労働契約)と期間の定めがある契約(有期労働契約)の2種類があります。パートタイマー、アルバイト、契約社員等のいわゆる非正規社員とは、一般的に有期労働契約を結んでいます。

有期労働契約は、文字どおり契約期間が決まっているため、期間の満了をもって次の契約を更新しないこと(「雇止め」)が可能です(注)

一方、正社員とは無期労働契約(期間の定めのない契約)を結んでいます。無期労働契約は、期間の満了がないため、基本的に労働者が亡くなるまで継続します。無期労働契約が終了するのは、「定年」や「自己都合退職」、または「解雇」に限られます。

(注)有期労働契約が長期間繰り返し更新されていたり、契約の継続を期待させている場合には、雇止めが認められないケースがあります。目安として3回以上更新していて、①更新の際に契約書を作っていない、②仕事の内容が臨時的なものではなく正社員と違いがない、③長年雇止めをしない慣行である、④長期間の雇用を約束するような発言がある、等のケースでは、裁判で雇止めが認められなかった事例があります。

 

 

(2)無期労働契約の特徴

無期労働契約を使用者側から終了させるには、「解雇」以外に方法はありません。しかし労働者保護の観点から、法律では「解雇」に厳しい制約が課せられています。「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当」でない限り、解雇は無効とされます。すなわち、単に「仕事の量が減った」「経費削減のため」「態度が悪い」「能力が劣る」等の理由で解雇しても、無効とされる可能性が高いといえます。

 

(3)無期転換ルールの問題点

今般導入された無期転換ルールは、契約更新を重ねたパートタイマー等が、自分の選択によって、有期労働契約を期間の定めのない契約に転換できる制度です。無期転換されれば、それまでの有期労働契約のように、使用者は雇止めによって業務量の変動に応じた雇用調整ができず、定年まで(定年を定めている場合。定めがなければ、本人が辞めるか亡くなるまで)雇い続ける義務が生じるのです。

 

2 「無期転換ルール」はどんな場合に適用されるのか?

   (1)対象となる労働者

同じ職場で、1年・半年といった有期労働契約を繰り返し更新して、通算5年を超える労働者(契約社員、パート、アルバイトなど名称は問わない)。

(2)対象となる有期契約

平成25年4月1日以降に開始した有期契約から通算が始まります。平成25年3月31日以前に開始した契約は含めません。また、契約のない期間が6ヵ月以上あるときは、通算はいったんリセットされ、新たな通算が開始されます(「クーリング」)。

 (3)無期転換の申込み 

  対象となる労働者は、5年を超える契約期間(=6年目)の途中で、無期労働契約に転換することを申し込むことができます。その結果、7年目から無期雇用がスタートします。

申し込むかどうかは労働者の自由です。また、使用者は申し込みを拒むことはできません。また、6年目に権利行使しなくても、要件さえ充たしていれば翌年以降も申込みが可能です。

 

3 無期転換を受け入れるときに注意すべき点は?

無期転換後の労働条件(賃金、労働時間など)は、原則として直前の有期労働契約と同じで構いません。無期労働契約となっても、正社員にする必要はありません

ただし、新たな労働条件を定めることも可能です。例えば「定年制度を設ける」「労働時間を変更する」等です。特に、パートタイマー等には定年を設けていない場合が多いため、新たに就業規則や労働条件通知書に定年年齢を設けておくことは必須となります。

 

4 どんな場合に無期転換が適用されないのか?

長期間雇用されているパートタイマー等は、要件を充たせば、基本的に無期転換ルールが適用されることになります。深刻な人手不足が続くなか、労働力の定着・確保という点で有効な方策のひとつとなります。ただし、以下のケースでは無期転換が適用されることはありません。

(1)「クーリング」期間が存在する

通算期間中に、原則6ヵ月以上(直前の有期労働契約の期間の2分の1以上の期間)の空白期間を挟むことにより通算はリセットされるため、無期転換の権利は生じません。

(2)当初の契約に更新上限条項が入っている

最初に契約する際、「更新は最長5年とする」等5年以内の上限が設けてあれば、無期転換の権利は生じません。ただし、現在契約中の労働者に適用すると、無効になるリスクがあります。

 

 5 無期転換を避けるために、やってはいけないことは?

現在既に雇用している有期労働契約者に対し、無期転換ルールを避ける目的で更新上限制を設けたり、5年経過の直前に雇止めしたりすることは、法的なリスクが非常に高いため、慎重な対応が求められます。

以上です。もしご不明な点がありましたら、お問い合わせください。