Q1:就業規則などについて
■就業規則は必ず作る必要があるでしょうか?
→ 労働基準法では、パート・アルバイトを含め10人以上の労働者を雇うときは、「就業規則」を作成し、労働基準監督署に届出ることが義務付けられています。「就業規則」とは、労働時間や賃金などの労働条件や、従業員が守らなければならない服務規律などを具体的に定めるもので、職場の「ルール・ブック」といえます。
■10人未満なら作らなくてもいいのですか?
→ 確かに、労働者が10人未満の法人には作成義務はありません。
しかし「就業規則」があることで、労務トラブルを未然に防止できることは勿論、「安心できるシッカリした職場」という評価が得られ、優秀な人材の獲得・定着につながります。小規模法人でも、「就業規則」を作成するメリットは大きいのです。
Q2:農業の労働時間などについて
■農業は季節や天候によって作業内容が変わるため、一般の会社や工場のような労働時間の管理は無理ではないですか?
→ 労働基準法では、1日8時間・1週間に40時間を超えて労働させてはならないと定めています(法定労働時間)。これを超えて時間外労働をさせるには事前の手続きが必要となりますし、割増賃金を支払う義務も生じます。
農業は、作業内容が天候など気象条件に左右される特殊性から、労働時間・休憩・休日といった事項に関して法律の適用除外となっていますが、これは悪天候時や農閑期に休養がとれるため、法律で厳格に保護する必要がないという趣旨であって、長時間労働が許されていると誤解してはなりません。
■農業なら1日何時間働かせてもいいのですか?
→ 法律の規制がないからといって、そのような労働条件では新規就労はおろか、他産業から転職してくる労働者はいないでしょう。現に、他産業の法定労働時間である週40時間を基本に労働時間を設定している農業法人は年々増加しています。優秀な労働力の確保・定着のために、他産業並みの労働時間の設定を基本としましょう。
Q3:有給休暇について
■有給休暇の取得を制限できますか?休みなのに給料を支払うこと自体がおかしくないでしょうか?
→ 農業は「休日」の規定は例外扱いですが、「年次有給休暇(年休)」については他産業と同様、6か月継続勤務すると10日間、最大で20日間の年休を与えなければなりません。年休は原則いつどのような目的でも取得できる権利ですから、取得制限は法律違反となってしまいます。
なお年休は、パート労働者に対しても与える必要があります(所定労働日数に応じた比例付与)。
■使用者側が有給取得を拒否することはできますか?
→ 労働者からの年休希望日が「事業の正常な運営を妨げる」場合にかぎり、使用者側にその日を変更できる権利が認められています。したがって農繁期に当日の年休申請は認めないとすることなどは、許されると考えられています。
Q4:アルバイト賃金について
■高校生アルバイトの時給はいくらぐらいが妥当ですか?
→ 賃金の最低額は、「最低賃金法」という法律に定められており、正社員はもちろん、パート・アルバイトを問わず、すべての労働者に適用されます。外国人技能実習生も同様です。
最低賃金は時給額で表示され、都道府県ごとに毎年10月ごろ決定されます。たとえば宮城県の平成26年の最低賃金は710円です。たとえ高校生のアルバイトでも、これを下回ることは許されません。
■最低賃金以上かどうか、正職員はどのようにして確認するのですか?
→ 正職員でも最低賃金を下回っていないか注意が必要です。月給制で、月によって労働時間が異なる設定の場合は、月給を1カ月当りの“平均”所定労働時間で割った額が最低賃金を上回っていなければなりません。その月ごとに計算するのではない点に注意してください。
Q5:労働基準法違反について
■労働基準法に違反した場合どうなりますか?
→ 一人でも労働者を雇い入れれば、労働基準法の適用を受けることになります。労働者の範囲は、正社員・パート・アルバイト・外国人労働者を問いません。また研修生であっても、指揮命令関係があり、報酬を支払っている等の場合には、労働者とみなされることがありますので注意が必要です。
労働基準法は、労働条件の最低限度を定めたもので、これを下回る条件の雇用契約を結んでも、その部分は無効になります。
■まさか罰金とか刑罰はないでしょう?
→ 労働基準法は、違反した場合に罰金や悪質なケースでは懲役刑まである強行法規です。それだけではありません。残業代を支払わなかったとして、労働基準監督署の監督指導により、2年間遡って残業代を支払わなければならないケースもありますので、甘く考えるのは禁物です。
Q6:厚生年金・各種保険について
■厚生年金の保険料は高いので、経営的に加入は見合せるべきですか?
→ 法人が一人でも従業員(正職員)を雇った場合には、厚生年金への加入が義務付けられています。法人事業では、労働保険(労災・雇用)と社会保険(健康保険・厚生年金)ともに強制加入となります。ただ農業法人の実際の加入状況をみますと、厚生年金への加入率は約7割にとどまっており、100%加入とはなっていないのが実情です。これは建設業などでも、同様の傾向にあります。
■加入はもう少し様子をみるべきですか?
→ 確かに厚生年金の保険料負担は重いのですが、加入によるメリットを考える必要があります。従業員にとってみれば、将来の年金額が確実に上乗せされますし、障害・遺族厚生年金などの手厚い補償がある等、多くのメリットがあります。保険加入は、従業員・家族に安心感を与え、優秀な人材確保には不可欠となっています。農業法人の従業員を対象にした全国農業会議所のアンケートでも、就業条件で最も重視しているのは、給与額の次に社会保険と答えています。
■パート職員を各種保険に加入させる必要はありますか?
→ 法人の場合、労災保険は労働時間や勤務日数にかかわらず強制加入です。もし加入していない状態でパート労働者が業務上で負傷、または死亡してしまったらどうなるでしょう。労働基準法により、使用者は治療費や遺族への補償金額の40%を負担することになります(指導を受けても手続きを怠っていた場合は全額負担)。したがって、労災保険への加入は必須です。
■労災保険だけ加入すればよいですか?
→ 雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で1カ月以上雇用する場合は加入させる必要があります。また健康保険・厚生年金は、1日または1週間の労働時間および1カ月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上ある場合には、加入が義務付けられています。